太田 久彦(おおた ひさひこ)
米国のリハビリテーション病院では、医療の質を確保する方法の一つとして、治療成績を集計する全米規模のデータベースが複数作られていて、データの収集と分析が行われている。個々の病院における具体的なデータベースの内容と院内での分析及び管理会社からのフィードバックについて現地調査を行い、日本での応用の可能性を検証する。
荒井 耕(あらい こう)
現在、医療政策・経営管理の両面から原価計算への注目が高まっているが、NHSでは特に90年代以降、この両面からの原価計算の強力な推進が行われており、日本にとって示唆に富んでいる。NHSにおける原価計算の展開プロセスと現状の詳細な把握・評価およびその役割・評価のためには、NHSの管理会計面について長く研究してきた英国研究者との共同研究及び英国での詳細な資料・聞取り調査が不可欠であるため派遣を希望する。
渡部 大介(辞退)(わたなべ だいすけ)
医療保険制度の違いにより米国では日本より医療費が高額である。糖尿病網膜症は日米ともに失明の重大要因となる。増加する糖尿病網膜症患者に伴う医療費を削減するために、予防対策や治療における医療経済学的解決が必要である。米国では全国的臨床試験で得られたエビデンスに基づいて治療法や適応基準が決められる。米国と日本における治療法や適応基準を比較研究し、日本での網膜症患者の医療費削減に貢献する事を目的とする。
松井 美帆(まつい みほ)
米国の医療保険サービス利用における高齢者の意思決定に関わる自律性を把握する。
倉田 聡(くらた さとし)
民間保険をベースとしたアメリカ研究ではなく、社会保険をベースとしたドイツ保険者研究がわが国には緊急に必要である。しかし、その実態の解明は、文献研究のみでは不十分であり、疾病金庫等の運営実態にかかる調査をフィールドワークの形式で実施する必要がある。
小林 肇(こばやし はじめ)
投薬ミス等を含む日本の医療事故への対策を行うには各医療機関の医療事故リスクを客観的かつ詳細に評価することが必要不可欠であるが、このような指標は現在わが国にはない。これらを実際に開発・運用し医療安全での成功を収めている米国ハーバードリスクマネージメント財団(RMF)での同指標作成の運用及び医療機関との連携の実態を研究し日本に適用可能な新たなリスク指標とその運用方法を開発することを目的とする。
柳田 多美(やなぎだ たみ)
国立精神・神経センター成人精神保健部は米国カルファルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の協力を得て、関東の救急救命センターにおいて、5ヵ年計画でトラウマ被害直後からの追跡研究を進めている。現在では、トラウマ体験直後の周囲の関わりかけが予後に与える影響に注目が集まる。救急医療従事者に対する家族への告知技術の研修およびガイドライン作成のため、包括的な告知技術研究を実践するUCSFへ派遣を希望する。
岩田 勲(いわた いさお)
評価者が予め定めた目標を基盤として行われるプログラム評価と異なり、多面的な教育プログラム評価を可能にするものとして英米で注目を集めているGoal–free型プログラム評価の企画立案、実施、データ解析といった一連の実践的技法を学び、日本での患者アウトカムを含めた総括的な医師臨床研修プログラム評価を行う。
片岡 万里(かたおか まり)
痴呆の進行に伴い、痴呆高齢者本人から得られる主観的情報が減少する。実施されているQOL向上のためのケア効果を的確に評価するためには、質的研究手法が適切である。そこで、看護の質的研究の世界的な権威者である、Dr.Morseによる質的研究プログラムに参加し、痴呆高齢者のQOL測定に関する方法の示唆を得たい。また、指導を受けながら蓄積しているデータを整理、解析して、痴呆高齢者QOL測定のための尺度を作成したい。
野内 英樹(やない ひでき)
タイは、申請者が活動を始めた1989年より急激なHIV(エイズウイルス)感染伝播が起きた。現在、HIV新規感染は減少しているが、病原体として様々な相互作用を持つHIVと結核の同時蔓延が大きな問題となっている。今回提案する結核とエイズの統合型ケアシステムの研究開発、特に抗エイズ薬の活用は、タイの様なHIV感染者数と研究インフラが整った所で進める必要があるが、最終的には日本の国際研修や保健研究開発の進展に役立てたい。
植松 悟子(うえまつ さとこ)
小児医療で用いられる多くの薬剤の適応外使用が問題となっている。わが国の小児科領域では正しい医薬品情報を収集・評価する、臨床疫学的・薬剤疫学・薬理学的な取り組みが遅れている。トロント大学および小児病院臨床薬理学教室では、これらの研究において世界のリーダーシップを取っており、臨床薬理学的・臨床疫学的・薬剤疫学的な研究手法を修得し、将来的に本邦における臨床研究に還元したい。
田村 洋平(たむら ようへい)
日本における基礎,臨床研究とその臨床応用は個々の研究室レベルにとどまり,必ずしもその業績を広く,効率良く利用しているとは言えない現状である.基礎・臨床研究で得られた成果をいかに効率良く患者に還元できるかは,際限のある科学研究費用と膨張しつつある医療経済を考える上で極めて重要な問題である.米国立衛生研究所は基礎・臨床研究で世界をリードする機関であり,この問題に関して学ぶ機会を得た為に留学を希望した.