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リレー随想 - 第35回 -

ヘルスリサーチを想う

地域医療における薬剤師への期待

東京大学 名誉教授

伊賀 立二

急速に進む高齢化社会における新たな医療提供体制として地域包括ケアシステムが動き始めた。地域住民の身近な健康づくりを目指すこのシステムが機能するためには、住民を中心とした医師、薬剤師、看護師、介護士など多職種の連携が不可欠である。

これまでの地域医療における薬剤師の役割は、医薬分業の進展による薬局での調剤業務が大きな割合を占めてきた。厚生労働省では、薬剤師の地域医療への新たな貢献を推進するために、地域における薬局・薬剤師の在り方の検討を重ね、患者のための薬局ビジョン、“~門前から「かかりつけ」、そして「地域」へ~”を策定した。このビジョンによって、調剤報酬上で「かかりつけ薬剤師指導料」が評価されることとなった。さらに、かかりつけ薬剤師・薬局の基本的機能を備えた薬局の中から、地域住民への健康づくり支援を積極的に行う「健康サポート薬局」を表示できる制度を定め、地域医療における薬剤師の役割に大きな変革がもたらされた。「健康サポート薬局」では、これまでの薬局機能に加え、24時間対応、在宅対応をはじめ、医療機関との連携体制の構築、健康サポートへの取り組みの実施などが基本的機能として求められている。

かかりつけ薬剤師・薬局、さらに、健康サポート薬局が国民から評価され、住民の健康の維持・増進に取り組むことにより、地域医療に薬剤師が貢献することが期待されている。

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