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リレー随想 - 第34回 -

ヘルスリサーチを想う

「30年」以降もヘルスリサーチで持続可能な保健医療システムを!

一般財団法人 救急振興財団 専務理事

安達 一彦

ファイザーヘルスリサーチ財団が設立された翌年の平成5年、厚生省大臣官房厚生科学課の担当課長補佐となり、永田町の会議室に何度かお邪魔しましたのが、財団との最初の出会いです。財団では当初から研究助成事業を実施されており、まだ「ヘルスリサーチ」という言葉になじみは少ないものの、研究費に恵まれていなかった社会医学的研究を採択してもらえるということで、システム構築に興味のある医師や研究者に大変喜ばれていたと記憶しています。その後、平成17年に課長として再び担当させて頂くこととなりましたが、財団ではこの年から、関係者の出会いの場としてヘルスリサーチ・ワークショップを開始するなど、バブル崩壊後の低成長期が続く中でも、着実な事業運営を続けておられました。昨年、このような財団の非常勤理事として声をかけて頂き、喜んで就任させて頂きました。

さて、平成30年は、団塊の世代が後期高齢者となる時代を目前にした我が国にとって、一つの大きな節目の年となりそうです。2年に1度の医療費改定と3年に1度の介護保険料改定の同時改定に加え、概ね5年毎に実施されてきた医療計画制度の見直しが30年に予定されています。さらに、第3期医療費適正化計画や第7期介護保険事業支援計画の開始、国保の財政運営主体が都道府県に変更されるのも30年からであり、保健医療福祉分野における様々な施策が初めて一斉に見直されると言ってもいいでしょう。

年々上昇している我が国の高齢化率は今後も上昇し、平成37年には30%を超えると予測されています。しかし、その内容を見てみますと、高齢者人口は過去20年で1500万人以上増加してきましたが、現在既に頭打ちとなりつつあり、これからの高齢化率の上昇は、主として分母である総人口の減少によるものとなります。言い換えますと、これまでは増加する高齢者に対するサービスの量的整備が最重要課題でしたが、今後は減少する労働人口でどのように高齢者を支えるのかということが重要な課題となってまいります。

人口減少時代の課題に対処し、持続可能な保健医療福祉システムの構築を支えていくためには、「最適な保健医療福祉システム構築に役立つ基礎情報を明らかにする調査研究(ヘルスリサーチ)」は不可欠であり、財団事業がヘルスリサーチ振興の一助となるよう、その一員として努めてまいりますので、よろしくお願いいたします。

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