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リレー随想 - 第33回 -

ヘルスリサーチを想う

今、ヘルスリサーチは、社会貢献の行動の原点になった!

日本慢性疾患重症化予防学会 代表理事

平井 愛山

ファイザーヘルスリサーチ振興財団との出会いは、今から15年前、小生が旧千葉県立東金病院院長として、地域医療連携と若手医師育成を基盤に千葉県九十九里地域の医療再生に取り組んでいる時であった。折しも千葉県は、国の政策と連動して、新任の堂本暁子知事のリーダーシップの下、『健康ちば21』の策定に着手するとともに、堂本県政の主要施策の一つに『性差医療』を取り上げ、全国に先駆けて県立病院に『女性専用外来』が開設された。

突然の辞令で、小生は『健康ちば21』の策定委員会委員長を拝命する事となり、院長として『女性専用外来』の立ち上げに取り組むのと平行して、毎週県庁健康増進課に通って、衛生部長や担当スタッフと共に、千葉県の健康・医療の現状と課題を明らかにすべく、2次医療圏別の各種データの解析を進め、半年かけて『健康ちば21』の総論部分を完成することができた。

このプロセスを通じて、地域をマクロの視点で捉え、様々なデータの収集・解析から、地域の課題を見える化し、その課題解決のための政策立案というプロセスを学ぶことができた。『地域を観る・診る・看る』視点の誕生である。中でも千葉県の女性の健康問題を明らかにすることにより、女性専用外来をはじめとする性差医療の具体的政策展開につなげることができたことは大きな成果であった。翌年、この成果を踏まえて、ファイザーヘルスリサーチフォーラムで発表することとなった。

その後、ヘルスリサーチに関わる人々との交流を通じて、故開原先生からのお声かけで『ヘルスリサーチワークショップ』の立ち上げに関わることになり、『ヘルスリサーチ』は、益々身近なものになっていった。この間、我が国は、少子高齢化をはじめとする人口構造の大きな変化と急性疾患から慢性疾患への疾病構造の激変があり、国民皆保険を堅持すべく、糖尿病をはじめとする慢性疾患の重症化予防が主要施策に取り上げられるようになった。4年前に、小生が全国の同志に声かけして立ち上げた日本慢性疾患重症化予防学会は、慢性疾患の重症化予防のツールとワークフローを開発し横展開することにより社会貢献を目指すものである。この社会貢献活動の原点こそ、ヘルスリサーチそのものである。

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