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リレー随想 - 第27回 -

ヘルスリサーチを想う

健康食品の表示解禁に思う

国際医療福祉大学 大学院長

金澤 一郎

今年の6月、規制緩和に絡んで安倍総理は「健康食品の機能性表示を、解禁いたします」と言い切った。これは、米国のダイエタリーサプリメントの表示のように、FDAの許可を得たものではないということを明記さえすれば、企業の責任において「このサプリメントは糖尿病を予防します」だの、「このカプセルは変形性膝関節症の痛みを軽減します」だのと表示しても良いことを意味する(と解釈できる)。総理の一言はまさに綸言汗の如しで、何らかの形で、実現しなければならない。だからこのことは、今は厳しい個別審査に合格した「特定保健用食品」と、ビタミンやミネラルの「栄養機能食品」の2種類しか認められていない、いわゆる健康食品の枠を大いに拡げることを意味する。

この時、健康食品の科学的評価に多少関係していた私は2つの事を考える。その一つは、健康食品を製造・販売する企業は、この規制緩和を千載一遇のチャンスと捉えて、襟を正して良い製品をつくることに邁進し、ゆめゆめ国民をだまして儲けよう、などと考えてはいけないと言うこと、そしてもう一つは、様々な企業の機能表示(そこには甘い言葉もあるだろう)に曝される国民は、冷静にそれらを評価・判断して、効果がなければ中止する勇気も持ついわゆるセルフ・メディケーションの域にまで賢くならないといけないと言うこと、の二つである。
これが実現すれば、日本社会は成熟に向かうに違いない。

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