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リレー随想 - 第26回 -

ヘルスリサーチを想う

ヘルスリサーチへの新たな期待

社会保険横浜中央病院 病院長/日本大学名誉教授

大道 久

健康や生命に関する研究においては、検討対象の有効性、合理性、あるいは目的達成に向けた効率化、最適化、さらには関係する人々の満足度や価値観等が計測され、それらが客観化・可視化されて、判断の根拠として活用されることなどが期待されているということであろう。

例えば事業体組織の最適化のための管理手法は少なからず検討されて一定の普及を見るが、近年繰り返しその意義が強調される「連携体制」や「チーム医療」のように、他者または複合的な主体が関わる活動の検討は未成熟である。最近医療現場に導入された「感染防止対策加算」は、単なる経済誘導を超えて、「顔の見える連携」の機会を普及させて効果を得たように見えるが、その実証はこれからである。また、今や国策となった「地域包括ケア体制の構築」は、公私の主体が重層的に関わるとされ、その分析は今後の主要な検討対象となろう。

大都市部とその近郊で超高齢化の進行が急であることが実感され、医療施設での受け入れが限界に近いことを予感させる。救急本部は受け入れ先の確保に難渋し、時に救急車が払底する。そして、東京23区ではすでに年間3千人以上が看取られないまま孤独死を迎え、無縁社会の到来と喧伝される。一方、高齢化で先を行った地方部では、地域格差の進行するなかで限界集落とされながらも、「地縁」によって支えられているようにも見える。また、先の大震災では、「絆」の力が復興に寄与することが経験された。これらの本体は「ソーシャルキャピタル」と理解されるが、その適用と計測も今後のヘルスリサーチの分野として期待される。

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