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リレー随想 - 第 20 回 -

ヘルスリサーチを想う

臨床研究のすすめ

厚生労働省 大臣官房 厚生科学課長

三浦 公嗣

わが国では、質や量の両面において世界的にも定評のある基礎研究に比べて、より日常の医療現場に近い環境で行われる臨床研究は欧米諸外国に比べて低調と言われてきたが、医学・医療を含めて急速に発展するアジア諸国の現状等を見ると、その将来はさらに厳しいと考える専門家も多いと思われる。

国民の健康は世界で最も高い水準にあるが、その背景には国民皆保険制度に代表される社会保障制度の充実と並んで、最新の医学・医療技術を速やかに現場に導入してきた関係者の努力がある。今後も国民の健康を高い水準で維持していくためには、これらの仕組みが引き続き有効に作用するようにすることが肝要であり、特に、臨床研究に従事できる余裕を医療現場に確保することに留意すべきと考える。

一方、基礎研究と臨床研究の一層の連携を図るためにいわゆる橋渡し研究の充実が指摘されている。わが国では基礎研究に従事する研究者に医師が占める割合が高いのではないかと感じる。このような特徴を生かして臨床現場の課題がより適切に基礎研究に反映されてきたからこそ、わが国の基礎研究の発展があったとするならば、その逆もあってよい。基礎研究に従事する医師からの発信に期待したい。

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