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リレー随想 - 第 19 回 -

ヘルスリサーチを想う

「五感健康法」の有効性のエビデンスを得るヘルスリサーチは?

東海学院大学教授 岐阜大学名誉教授

岩田 弘敏

「五感健康法」というものがある。これは「五感を刺激することにより脳を活性化させ、恒常性を維持し、自然治癒力を高め、心身の健康保持・増進を図る方法」と定義されている。園芸、旅行、ウオーキング、料理などの趣味・娯楽の類である。心身障害者などに対して臨床医学的にエビデンスが得られている色彩療法、音楽療法、アロマテラピー、食療法、温泉療法などがある。エビデンスが得られている療法であれば、当然、健康者にも有効であろうとの発想で提唱されたのが色彩健康法、音楽健康法、芳香健康法、食健康法、温泉健康法で、これらを統合して五感健康法と称されている。しかし、健康法としてはエビデンスがない。エビデンスがないだけに説得力がなく、啓蒙普及しにくい。

健康であることは五感からの外的環境、あるいは内的環境に対して恒常性が維持されている状態といわれている。五感健康法を日常励行していれば、絶え間ない環境の変化に対して、生体の形態的、機能的状態が恒常性の範囲内(健康保持)に保持されているかどうか、否、むしろ恒常性の範囲を広げる作用(健康増進)を示すかどうかのエビデンスを得ておきたいものである。しかし、そのためのヘルスリサーチを行うことは至難の技である。ある健康障害に対し治療効果が上がり、機能修復ができた療法を健康者用にリアレンジして、それを健康法として、それが健康保持・増進に役立つかどうかのヘルスリサーチができればよいのだが。

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