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リレー随想 - 第 17 回 -

ヘルスリサーチを想う

『地域医療に果たすヘルスリサーチの使命』

新潟薬科大学 学長

山崎 幹夫

国民の健康づくり推進運動の一環として2000年より発足し、その後数回の改正を経た「健康日本21」は、本年4月、さらに新しい制度として「特定健康診査・特定保健指導」を取り入れることになった。いわゆるメタボリックシンドロームに着目し40歳から74歳までの男女を対象として腹囲を主とした身体測定、血圧、血中脂肪、血糖等を基本項目とする「特定健診」と、低リスク保有者への動機付け支援と高リスク者への積極的支援の二段階に分けられた「特定保健指導」を実施する。これからの地域医療への貢献が注目される。

近年における顕著な医療技術の高度化、医薬品開発の進展は医療の質を圧倒的に高めた。しかし、医療を受ける立場からの視点で見る限り、“高度化”の恩恵が、全ての受療者に行き渡ったかという点にはなお問題が残される。医薬品は、かつては新しい技術の導入が新しい医薬品を生むと言われた。が、今は新しい患者のニーズが新しい医薬品を生む時代に変わった。医療も同じで、医療技術の最先端への高度化が直接的に生活者の健康水準を高めるかというと、そうはいかない。ヘルスリサーチの役割が期待通りに働き、その成果を待ち望む多くの人たちに送り届けられない限り成果は活用されない。「健康日本21」の新しい試みに期待したい。

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