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リレー随想 - 第 14 回 -

ヘルスリサーチを想う

『医療費適正化計画は誰のためにある?』

財団法人 厚生年金事業振興団 常務理事

松田 朗

昨年の通常国会で、健康保険法等の一部を改正する法律が成立した。これによって、わが国における医療保険制度はかつてない大変革を遂げようとしている。

国は、国民皆保険を堅持し、将来にわたり持続可能なものとしていくため、医療費適正化を総合的に推進するとともに、これまでの老人保健法に基づく老人医療制度に代わって、新たな高齢者医療制度を創設(「高齢者の医療の確保に関する法律」に改正)し、大小様々の形で存在している保険者の再編・統合に向けて所要の措置を講じている。この中で特に注目すべきは高齢者医療確保法に規定されている「医療費適正化計画」である。

この計画は、平成20年度を初年度とする5年計画でスタートするが、その政策目標は生活習慣病予防の徹底と平均在院日数の短縮である。そして計画最終年の翌年(平成25年度)には実績を評価し、場合によっては、都道府県の意見に配慮して、国は診療報酬を定めることができるようになったのである。つまり、これまでは全国一律であった診療報酬単価に、都道府県によっては単価差が生じる余地が生じたのである。

以上のような「医療費適正化計画」に伴って生ずるであろうと想定される諸問題は、ヘルスリサーチャーにとって格好の研究対象となるのではないだろうか。

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