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リレー随想 - 第 13 回 -

ヘルスリサーチを想う

世界の看護者不足とそのインパクト

兵庫県立大学副学長
国際看護師協会会長

南 裕子

今年の世界保健報告書によると、約400万人の保健医療従事者が不足しているが、そのなかでも圧倒的に看護者数が不足している。たとえば、カナダでは2016年には113,000人、アメリカ合衆国(U.S.A.)では、2020年には40万人が不足すると予測されている。ヨーロッパでも不足している国が多い。

看護者の不足を補うために豊かな国は貧しい国から看護者を集めているが、今後これが加速する危険性がある。人口1000人に対し看護師で最も多いのは英国で12人(日本は約8人で世界27位)だが、英国はフィリッピンからの看護者の移民に頼っている。一方、フィリッピンでは人口1000人対し看護者数は1.7人なので、この格差は深刻である。

一方、看護者不足を自国で補うことができず、かつ外国看護者に頼れない国は最近、看護者に類似した仕事でありながら、かなり短い教育でよしとする新たな職種を作る傾向が見られる。人々の生命の安全を脅かしかねないこのような対応を国際看護師協会は危惧しているが、看護師不足の実態とその影響についての世界的なデータが不足している。世界の医療の前線にいる看護者の不足は、一国では解決できない時代にあるといえよう。

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