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リレー随想 - 第 12 回 -

ヘルスリサーチを想う

国際比較から見た日本のヘルス指標

北海道大学大学院医学研究科教授

岸 玲子

昨年11月に公表されたOECD先進31カ国の保健医療に関する統計資料(HealthatGlance)を見ると日本の保健医療の特徴が浮かび上がる。平均寿命は第1位、乳幼児死亡率はアイスランドに次ぎ第2位、成人の肥満割合(BMI30超)は韓国と並んで1番低い。高齢者のインフルエンザ予防接種率は低く、喫煙率は依然高い
(男女平均で30%、21位、1位はカナダ17%、2位はアメリカ18%)。
高額医療機器の普及率は日本が突出して高い
(CTスキャン台数は人口100万対92.6で1位、2位の韓国が30.9、3位のベルギーは28.8、アメリカは14位で13.1)。

一方、公衆衛生サービスや予防プログラムに投入されている費用はOECD全体でも医療費の2.9%に過ぎず低いことが問題視されている。日本では平均よりさらに下位だという。日本の在院日数は非常に長いが、医療費はGDPあたり7.9%(2002年)と低い。こうして見ると高齢化が進んでいるのに、医療費も予防費用も安く押さえているのが日本の特徴とわかる。医師など第1線病院での厳しい労働条件を考えれば、あるいは医療の質を考えれば、これをさらに低く押さえようというのは国として妥当な解決方向なのであろうか?削るべき予算はほかにもっとあるのではないだろうか?

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