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リレー随想 - 第 4 回 -

ヘルスリサーチを想う

医療の生産性向上への提案

医療法人社団 慶成会青梅慶友病院 理事長

大塚 宣夫

十年一昔の言葉の通り、卒業後40年にして目にする最近の医学部の教科書は、当然のことながらその内容の拡がりといい深さといい、まさに様変わりである。また、最近の医療技術の革新ぶりにもただ感心するばかりということも少くない。

しかしその発展ぶりほどに医学、医療が国民の幸せ感向上に寄与しているかと問われれば首をひねらざるを得ない。また、医師や医療機関への信頼感となると明らかに減少しているといえよう

その間の事情は老人医療、それも終末期医療に近い現場にいるとわかる気もする。そこでは医療技術の進歩や、医療専門職の社会性の無さが、長生きの先にある大往生を妨げていることがまれならず見られるからである。ここにあるのは提供側と受ける側の明らかなミスマッチである。

しかし、これほどまでに医療が高度化、専門化されてくると、社会性や人間性も含め一人の医師にそのすべてを求めるのは酷というものである。そんなスーパーマンはどの分野でもほんの一握りしかいないのが常だからである。

ここは一つ発想を変え、医療資源の有効活用という視点からも、医療の提供側と受ける側の間の通訳ができるコーディネーターあるいはコンサルタントの育成が急務ではなかろうか。医療への信頼も含めて生産性は大きく向上するに違いない。

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