ライブラリー

リレー随想 - 第 2 回 -

ヘルスリサーチを想う

「健康への橋渡しとしてのヘルスリサーチへの期待」

厚生労働省 大臣官房 厚生科学課長

中谷 比呂樹

やれBTだ、ゲノム医療だと、医学研究も大型化、先端化する傾向が続いている。結果も具現化しつつあり、誠に頼もしい。

しかし、最先端の研究者に研究資金を委ね、配分は競争的にし、研究成果は欧米一流雑誌への投稿と特許数を指標として評価するという米国流と称される方向性には一抹の不安を禁じ得ない。世界の医療と研究をリードする米国の健康水準は、意外と低水準に留まっているからである。これは、研究成果の国民への橋渡しといった部分が弱かったからではなかろうか。

しかし、我が国のお家芸ともいえる結核対策で大きな進歩がニューヨーク市で見られた。即ち、日本人率いるWHOの国際チームの勧告を踏まえて、都市の結核を制圧したのである。従来からの「検診と入院医療方式」に代わり、自覚症状で見つかった患者に、目の前で抗結核薬を確実に服用させる「直接服薬確認短期治療法(ドッツ)」を取り入れ、費用と治療効果に優れた対策パラダイムが作られた。このような、既存技術の組み合わせや新たな視点からの対策の見直しもまた重要な研究分野であり、その主軸をヘルスリサーチが担っている。
皆様の一層の御発展を祈念している。

リレー随想一覧