ライブラリー

第 17 回

温故知新 ー助成研究者は今ー

「財団助成研究・・・その後」

第16回 平成19年度(2007年度)若手国内共同研究助成

京都大学泌尿器科

岡田 真平

岡田 真平

平成19年度国内共同研究助成により「類似自治体間の医療費関連指標と保健医療施策展開の比較研究」を実施させていただきました。私の所属機関は、一基礎自治体(長野県東御市、合併前は北御牧村)が設立した稀な研究所です。だからこそ基礎自治体単位にこだわって行政施策にフィードバックできる成果を得られるように研究目的を定めたことが、助成研究として評価していただけた理由ではないかと考えています。この研究では「寿命と医療・介護に関する市町村比較分析表」を作成し、当時の国保老人医療費と介護保険費用額、そして寿命を総合的に「見える化」したことで、多くの市町村から肯定的な評価をいただくことができました。残念ながら、平成20年度から後期高齢者医療制度が始まり、都道府県ごとの後期高齢者医療広域連合が保険者となったことから、国の公開統計から基礎自治体単位のデータを取得することが困難になるなど、この手法の継続的な活用が容易ではなくなりました。とはいえ、同じ県内の市町村については、医療広域連合からデータを得ることによって引き続き比較可能ですし、さらには、今まさに活用が始まろうとしている国保データベース(KDB)システム(「特定健診・特定保健指導」、「医療(後期高齢者医療含む)」、「介護保険」等、国保連が管理する情報を保険者単位で利活用できるもの)等を使えば、当時のアイデアを生かした発展的な研究が可能になるのではないかと考えています。折しも、2025年に向けて地域包括ケアシステム構築が基礎自治体単位での地域づくりの中心課題に位置付けられ、医療・介護連携や関連情報の「見える化」が求められています。助成をいただいた研究をさらに発展できるよう、今後も取り組んでいきたいと考えています。

研究助成をいただいたことに加えて、ファイザーヘルスリサーチ振興財団には、平成22年(第6回)と23年(第7回)のヘルスリサーチワークショップでも大変お世話になりました。このワークショップは「出会いと学び」の看板通り、多種多様な講師陣・参加者との知的刺激溢れる交流の場であり、この会への参加が人生の中の大きなアクセントになった、といっても過言ではありません。私は元々、教育学(体育・スポーツ・身体教育)を専攻してきましたが、健康づくりや介護予防のための身体活動・運動促進の立場から地域に入り、今は広く公衆衛生施策全般に関わっています。そんな中で、ワークショップを通して多くの方々と語らえたことは、かけがえのない体験となって今の自身の研究・実践活動に生きています。

研究助成、ワークショップともに貴重なチャンスを与えていただいた貴財団に改めて心より感謝申し上げるとともに、多くの若い先生方にもぜひこれらのチャンスにトライしていただき、個々人のステップアップやネットワークの広がり、そして健康な社会の発展へとつながっていくことを切に願っています。

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