内田 裕之(うちだ ひろゆき)
本邦におけるこれまでの精神科医療は入院施設を中心としたものであり、しばしば患者様の社会復帰を遅らせることもあった。こうした反省に立ち、現在、脱施設化及び地域密着型医療への移行が必要とされている。この度、他職種による包括的アプローチの先進国とも言えるカナダでその現状を学ぶ機会を得たため、そこで得られた知見を今後の日本の精神科医療に役立てたい。
近藤 朱音(こんどう あかね)
本留学の目的は英国における遺伝カウンセリングの実際及び教育システムの調査である。近年、多くの疾患の病因が遺伝子レベルで解明されているが、遺伝子情報を医療の場で生かすためには、遺伝カウンセリングは必須である。日本の遺伝専門外来は数も限られ、現在その果たす役割を模索中である。留学先のウエールズ大学病院は基幹病院であり、数多くの疾患への対応、各地の専門外来との連携診療について調査し今後の参考にしたい。
細田 満和子(ほそだ みわこ)
アメリカにおいては、保健医療サービスの提供のあり方や医学研究に対して、患者団体が強い影響力を持っているといわれている。また、「健康と病いの社会学」や「障害学」といわれる学際的研究も盛んで、患者及び患者団体の保健医療領域における分析についても研究の蓄積がある。こうした研究方法を学びながら、患者団体ならびに医療機関や医学研究機関を調査研究する。
甲斐 克則(かい かつのり)
ニュージーランドにおける医療事故の法的処理・被害者救済システム(ノーフォールト補償システム)の法的研究を現地で行うことにより、実態調査と法的枠組みを探り、新たな医療事故処理システムの方策を探求し、今後の日本の医療事故対策に役立てることを目的とする。
竹中 彰治(たけなか しょうじ)
オーダーメイド口腔ケアシステムを確立するためのエビデンスの蓄積を行う。病原性バイオフィルムはその付着部位によって多種の病態を示す。これらの病原性を解析するためにはin vivoを忠実に再現したモデルによる実験が望ましい。モンタナ州立大学バイオフィルムセンターにおいて、豊富な設備を使用して病巣再現モデルを構築し、想定される種々の除菌、破壊法の効果をリアルタイムに解析する
岡村 信一(おかむら しんいち)
「consumer health informatics」 は「受け手側から見て役に立つ健康情報は如何にあるべきか」を考える新しい学問で、インターネットの普及した現在にこそ必要と考えられるが、わが国には普及していない。そこで、この分野を専門とするBernstam博士の研究活動に参加することで研究手法を学び、その成果をわが国に還元するため派遣を希望する。
鈴木 友理子(すずき ゆりこ)
メルボルン大学における国際精神保健リーダーシッププログラムは、国際精神保健のセミナーを集中的に提供し、教授陣、参加者との交流はこの領域での欠かせないネットワークの基盤をもたらす。構造化した精神保健、公衆衛生のプログラムでの研修と同時に、精神保健のサービス研究、多文化精神医学の第一人者のアドバイス下で、わが国の精神保健システムへのEBM導入をめぐる比較文化的研究を実施する。これらの研究を通じて、欧米で確立されたEBMをわが国の精神保健サービスへ導入する際のより良い適応法を提示することを目的とする。
七戸 秀夫(しちのへ ひでお
日本でも幹細胞移植治療を臨床応用する試みがなされているが、様々な困難があり必ずしも順調ではない。一方スタンフォード大学脳神経外科では、神経幹細胞移植治療がすでに臨床治験段階にあり、将来のES細胞治療を見据えている。基礎実験を行う研究室、臨床応用の現場、ビジネス(StemCell Inc.)、医療政策などを総合的に検討する。
青木 研(あおき けん)
渡米の目的は、以下の2点です。 1) 新しい推定手法の修得:近年では医療経済の分野でも、構造推定と呼ばれる、新たなモデル推定の手法が用いられるようになっている。この手法を修得し、日本の医療市場分析に応用する。2) 米国データの入手・実地調査:制度差を考慮しつつ、類似のモデルを日米両国に適用するため、米国での資料収集・調査を行う。
三輪 眞知子(みわ まちこ)
英国は国民が安心できる保健・医療サービスの確保を目指したNurse−led−service(看護主導の保健・医療サービス)と称し、看護師の裁量権拡大を政策化し国民から高い評価を受けている。本研究は英国の保健医療政策の背景、看護スペシャリスト資格とその教育、看護師の業務範囲について英国保健省、各病院、保健センターでの現地調査を行い、日本における看護主導の保健・医療サービスの可能性を検証する。この研究成果はわが国の国民の保健医療ニーズの多様化や医療費の効率的使用に貢献する。