岩田 太(いわた ふとし)

所属機関名 上智大学 法学部 助教授
留学目的 医療生命倫理と法をめぐる現代日本の特徴は、例えば、同じ臓器移植であっても生体間移植には法律による規律はないのに対して、脳死移植には厳格な法の規制が存在すること、また、合衆国ではほとんどない過失による医療ミスを刑事訴追することなど、医療に対する法の介入・関与の仕方に一貫した理論や政策を見出すことが困難なことである。そこで、豪州の経験を題材に、私は、日本の医療生命倫理における法の適正な関わり方を再検討したいと考え留学を志している。豪州における医療と法の議論は、以下の2点で興味深い。第1に、医療事故の防止、生殖補助医療などに先進的な取組みをしてきたにもかかわらず、合衆国についてとは異なり、従来日本の法学者が十分研究してこなかったこと、第2に日本同様、専門家や(州)政府が依然として主導的な地位を占めることである。従って、豪州との比較研究は日本に重要かつ応用可能な視点を提供しうると考える。より具体的には、一般にイメージされる事後的に制裁を課す法の役割を超えて、例えば、医療事故や患者の診療情報などを含め、医療に関する情報の秘匿・保護、または、開示に際して、専門性ゆえに閉じがちな医療の世界に社会の視点を提供し、いわば医療と社会の利害を建設的な形で調整し、繋ぎ合わせるという法の機能を検討する。
受入機関 Melbourne Law School, The University of Melbourne, Australia
助成金額 4,000,000円
留学期間 16.08.01~17.08.31
採択年度 平成15年