ライブラリー

リレー随想 - 第 28 回 -

ヘルスリサーチを想う

医療を更に進化させるために

当財団 理事長

島谷 克義

日本の医療における喫緊の課題が高齢化であることは論をまたない。この問題にどう立ち向かうのかという議論が活発に行われ幾つかの施策・対策が考えられてきたが、根本的な解決策が無いままその時代へ突入することになろうとしている。

日本には高齢者や疾病・障害を持った人々への制度的配慮に古い歴史があり、8世紀の大宝律令では、高齢者対策として80歳には一人、90歳に2人、100歳だと5人の専用ヘルパーが世話をしてくれる制度があり、疾病や身体障害がある場合には税金や労働の減免など手厚い保護を受けることもできた。無論、この時代に超高齢者が極めて少なかったから可能な政策であったのだろう。常に政策は資源との兼ね合いということである。

今日、飛躍的に増加する医療への要求にこたえるために必要な新しい資源はあるのか?答えはおそらく、イエスである。他の産業や領域ではビッグデータを使った新しいアプローチの成功例が報告されつつある。今まで活用されなかった膨大な情報がデータサイエンスという新しい概念で生きた情報として利用されるようになってきた。医療は情報の塊である。情報がすべてであるといっても過言ではない。無限にある筈の情報をビッグデータとして認識し収集し活用できるようになれば医療に革命が起きる可能性がある。既に幾つかの研究施設、企業が連携をしながら新しい医療情報を収集し、予防、治療、医薬品の研究開発などに活かすための試みを始めている。これらの活動を国家的な規模とスピード感をもって進ませることができれば、この難局は乗り越えられるのであろう。

これからは、情報は抱え込むものではなく共有するものであるという認識も重要である。

リレー随想一覧