ライブラリー

第 29 回

温故知新 ー助成研究者は今ー

「財団助成研究・・・その後」

第22回 平成25年度(2013年度)国内共同研究助成

南日本ヘルスリサーチラボ 代表/ひらやまのクリニック 院長

森田 洋之

「研究助成、その後の展開」

ファイザーヘルスリサーチ振興財団国内共同研究助成を頂き、私は「財政破綻し総合病院がなくなってしまった夕張市における、市民の健康指標と医療費の前後比較」というテーマで研究を行いました。

夕張市立診療所の院長をしていた私の立場でさえもこれらのデータを集め、分析するのにはなかなかの骨を折りました。特に医療費については、国保・社保・公費・後期高齢などでデータの統一性にかけ、また分析した10年の中でも高齢化率も大きく変わり、同時に保険ごとの被保険者の平均年齢も上がる(当然医療費も上がる、比較対象の地域はそこまで変わらない)など、分析方法に苦労したことを懐かしく思い出します。

研究結果の概要は以下のとおりです。
「財政破綻により夕張市は市内で唯一の入院機能を持つ市立病院171床が閉院となり、プライマリ・ケア機能のみの診療所19床に大幅に縮小されたが、結果として夕張市民のSMR(標準化死亡比)は変化なく、また在宅患者の急増・死亡診断における老衰死の急増・救急搬送数の半減・一人あたり高齢者医療費の減少などの事象が観察された」

この結果を研究期間終了後の第22回ヘルスリサーチフォーラムにて発表しましたところ、座長の先生からいたくお褒めの言葉をいただき、「研究というのは他人は誰も褒めてくれない、自分で汗をかいて広める努力が必要。この結果は厚生労働省にも、一般市民にも広く知ってもらうべきだから、頑張って広報するように」と言っていただけました。

そのお言葉に勇気づけられ、その後一般向けの書籍を書いたり、社会保険旬報にレポートを書いたり、また市民向けのTED講演などに出たり、自分なりに広報活動を展開してきたつもりです。こうして、医師の本業以外でも広く活動をさせていただけるようになりましたのも、全てはファイザーヘルスリサーチ振興財団の研究助成を頂きましたことが始まりだったと思うと、感謝してもしきれないくらいのご恩を感じております。本当にありがとうございました。

私のような、大学の研究機関にも全く属さない一介のフリーの医師に対しても分け隔てなく接していただけるファイザーヘルスリサーチ振興財団の研究助成が、今後も更なる若手の研究者に広く浸透し、世界に研究の輪が広がってゆくことを期待しております。

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