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第 26 回

温故知新 ー助成研究者は今ー

「財団助成研究・・・その後」

第20回 平成23年度(2011年度)国際共同研究助成

国際医療福祉大学大学院 教授
(医療福祉経営専攻・医学研究科公衆衛生学専攻)

武藤 正樹

「薬剤給付管理とジェネリック医薬品に関する日米比較」
US-Japan Comparison of Pharmaceutical Benefit Management and Generic Medicine

2011年、東京青山の国際医療福祉大学のキャンパスで、私たちはファイザーヘルスリサーチ振興財団の助成で、「日米共同PBMシンポジウム」を開催した。PBMPharmaceutical Benefit management)とは日本語では、「薬剤給付管理」と訳されていて、以下のように定義されている。PBMとは保険者、製薬企業、医薬品卸、薬局、医療機関、患者といった様々な利害関係者の間に立って、医薬品のコストや疾病管理の観点から薬剤給付の適正マネジメントを行う活動のこと。

シンポジウムでは、米国側からはコンサルタントのGregg L. Mayer氏、元カイザーパーマネンテ薬剤部長のClifford L.Wong氏、日本側からは、国際医療福祉大学の池田俊也氏、日本大学の亀井美和子氏、日本調剤株式会社の三津原庸介氏らが参加してPBMとジェネリック医薬品の普及との関係について意見交換した。

2011年のシンポジウム当時、日本のジェネリック医薬品の普及率は数量ベースでまだ30%以下だった。シンポジウムでは米国でのジェネリック医薬品普及に大きく貢献したPBM活動、とくに「フォーミュラリー」の作成活動に関心が集まった。フォーミュラリーとは保険者が推奨する保険償還可能医薬品リストのことで、保険者や外部の専門家が集まって作成する医薬品リストだ。米国のフォーミュラリーには多くのジェネリック医薬品が搭載されたこともあって、米国におけるジェネリック医薬品の普及に大きく貢献した。シンポジウムで米国側の発言で印象に残ったのは、「2011年現在、米国ではジェネリック医薬品の普及率は70%を超えたところだ。しかし、もしフォーミュラリーがなければ米国でのジェネリック医薬品の普及率はおそらく40~50%に留まっていただろう」。

さて現在、日本のジェネリック医薬品の普及率はなんと72%、シンポジウム当時の米国と肩を並べている。そして米国はといえばすでに90%を越している。日本のジェネリック医薬品普及の政策目標は、2020年9月までに80%だ。ただこの80%目標が富士山の八合目と同じで急坂となり達成が難しい。このため今日本で関心が集まっているのが、われわれが2011年当時に日米シンポジウムで取り上げたフォーミュラリーなのだ。フォーミュラリーの後押しがなければ80%目標達成は困難だろう。このため三津原庸介氏は現在、日本調剤株式会社で保険者へのフォーミュラリー普及活動の推進役の一人となっている。

そして私もまた、現在、日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会の代表理事として、学会としてもこのフォーミュラリー活動の推進に注力しているところだ。

2011年ファイザーヘルスリサーチ振興財団の助成による日米共同シンポジウムが、今日の日本のフォーミュラリーの国内展開の先駆けとなった。このことを今では懐かしくまた誇らしく思っている。

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