ライブラリー

第 16 回

温故知新 ー助成研究者は今ー

「財団助成研究・・・その後」

第15回 平成18年度(2006年度)国内共同研究助成

阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター 研究部所属

古本 尚樹

古本 尚樹

2006年度若手国内共同研究「市町村合併による過疎地医療機能の変化とその対策に関する研究」で助成を頂き、誠にありがとうございました。当時、私は大学院生(北海道大学)であり、その後本研究の成果を出したときは大学院生と教員(浜松医科大学)をかねていた時代でした。当時、貴助成応募を勧めてくれた指導教官にも、自分達の研究が採択してもらえるか不安であることを相談した記憶があります。本研究では木佐 健悟君と共同で調査、研究をさせていただきました。この研究は自分の研究における基礎となっています。その調査手法、また協力していただく自治体や医療関係者、保健師の方への対応など、当時の経験が現在にも引き継がれ、かつ発展できるよう日々努力しています。当時、地元の北海道をはじめ各地で、いわゆる「平成の大合併」の動きが起こり、それにともなう地域医療・保健・福祉分野がどうなるか、ひいては住民の健康にかかるサービスがどうなっていくかは課題でした。地域社会、とりわけ地方都市、いわゆる過疎地では大きな問題になっていたと考え、本テーマを設定しました。実際、地域を調査し、自治体の保健師の方など住民と接する機会の多い職員等に聞き取りをした際、この影響、課題が浮上する一方、自治体合併による健康診断など機会の増加を、いかにメリットとして更に活かすかが大切と認識しました。この研究は、今でも各地で進めているものです。

現在、私は災害対応や防災、減災に関する研究機関に所属して、365日24時間体制で災害支援や調査に対応しています。地震、津波、火山、雪害、原発関係、風水害などあらゆる災害が対象です。私は、東日本大震災被災地における中長期的見地からの医療・保健・福祉分野、そして今後の街づくり、防災対策等を総合的にに調査、研究を行っています。昨年は特に災害の多い年でした。風水害、竜巻など日本、また海外でも多くの犠牲者が出て、改めて日本、国際的にも災害への備えが必要であることを改めて考えさせられました。東南海トラフ地震、首都直下型地震などへの対策が急務である昨今、私は災害医療・保健・福祉分野を中心に尽力しています。かつて助成していただいた特に、自治体や関係機関、そしてその職員の方々との協調と連携を常に重視して、現在の研究を進めています。将来的に連携できる良い関係でいたいと考えています。また、住民の方々、例えば仮設住宅の住民の方と聞き取りで出会う機会は多いですが、その方々はもちろんのこと、いわゆる「孤立化」する階層を無くす意味でも、外出できない方々へ「手を差し伸べる」ように心がけています。これはかつて助成研究で過疎地域をまわった時の高齢者等、いわゆる社会的弱者の方々とのふれあいから派生しているものです。今後も、研究助成で培った経験を大切にしながら、研究に尽力したいと思います。最後になりますが、貴財団のますますのご発展を心より祈念し、筆を置きます。

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